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毎度ありがとの。うらが(私が)あらやのおんちゃんや。いつもお世話になってるの。三国港のセリはの、普段は魚や甘えびやけど、11月6日に越前がに漁が解禁になっと急にせわしなく(あわただしく)なるんや。うちの近くの東尋坊にも観光のお客さんがようけ(たくさん)来て、うらも一生懸命せなあかん、いう気になるんやの。 |
越前がに漁をする船は、底引き網漁船やな。越前がにちゅうんは、水深200mほどのつめたーい海の底におるから。三国はだいたい15、16隻ほど船があって、これが11月5日の夜、港を出て漁場で夜中の12時になるのを待っとる。12時を過ぎたらもう11月6日、いっせいに越前がに漁開始!となるわけや。 漁師も命がけで越前がにをとっとる。たまに網に足がとらわれて海に落ちたり、気が付いたらもうおらんかった、ということもあるわ。海に落ちたら冬の日本海や、そうやな、ものの1分もせんうちにあの世行きになるんやないかな。うららも感謝してかにを扱わなあかんの。 |
三国のいいとこは漁場が近いっちゅうことと、日帰りで港に帰れることやな。漁場が近いからすぐに港に帰って水揚げできるんや。越前がにを生かしたままでセリにかけて、一刻も早く生きたまんま注文した店に運ばないとあかんのやから、鮮度と速さが命っちゅうわけや。でもそこまでするから越前がにはうまいし、ありがたみもあるんやで。 |
三国港のセリは、夕方6時ごろから始まる。ちなみに越前漁港は朝の午前8時からやな。夕方までに、船は港に帰ってセリにかけられるよう準備せなあかん。漁師はタグもつけなあかんしな。(注:タグとは産地を証明する標識で、黄色のプラスチックに「越前がに」「三国港」と書かれている) 三国港のセリのやり方は、セリ用の木の台が建物の中にあって競る者が台の上に座る。台の周りを仲買人たちがぐるりと囲む。越前がには発泡スチロールでできたトロ箱に並べられて一箱ずつ台の中央へと送られる。その一箱をめぐってセリ人と仲買人の値のかけ声が響くわけや。夕方に始まって夜までかかって競るんやから、熱気も雰囲気もすごいわな。 トロ箱はみんな同じ大きさで、中に入る越前がにの数によって3ハイ入りや4ハイ入り、8ハイ入りみたいにランクが分かれることになる。当然、数が少ない方が大きくて、1パイごとの値も張る。今じゃ、一箱が何万もして高くなったもんや。昔はかにの殻を畑の肥料にしたぐらいたくさんとれた。 セリ落とされたかにはすぐに仲買の車で運び出して、どれをどの注文主に持っていかにゃならんか、整理して車に積みなおさんやいかん。どこを見ても、ばたばたと戦争みたいなもんやな。 |
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越前がにちゅうやつは、乾物にも塩漬けにもならんし、焼いても冷めては意味が無い。ゆでがにで2〜3日はもつけど、生の死んだやつは足が速すぎてすぐに悪くなる。こんなふうに保存がきかん越前がにちゅうんは、昔は地元のもんだけのご馳走やった。 今こんなに遠くからうらの店に来てくれたり、毎年楽しみにしてくれる常連さんがいるのも、底引きからセリ、運搬と、かにが生きていることにこだわった三国のやり方がいいんやろな。そやさけ(そうだから)越前がに料理もうまいんやろな。うらもがんばらにゃいかんの! |